東京地方裁判所 昭和30年(ワ)4218号 判決
証拠を綜合すると、被告会社赤羽支店長は同会社の基本的な事業行為である建物の給付契約の締結、建築工事請負、建築材料の販売、支店における社員の任免、手形の振出その他の手形行為の権限を有せず、主として契約の加入募集、自店外交員の指導監督事務を取扱つているのに過ぎないことが認められ、右赤羽支店長が被告会社を代理して手形の振出その他の手形行為をする権限を与えられている事実を認めるに足りる証拠はないから、当時右赤羽支店長であつた訴外間久を支配人と同一の権限を有する者とし、又被告会社を代理して本件手形を振り出す権限があつた事実はこれを認めるに足りる証拠がない。而して右訴外間久は被告会社の前記基本的事業行為には属しないが、前認定の担任事務に附随する小金額の契約や支払については被告会社を代理する権限を有していたものであることが認められるので、訴外間久の本件手形振出行為は正当な代理権を超えるものであるところ、当事者間に争いのない被告会社赤羽支店の登記がある事実並びに右訴外間久が本件手形振出当時赤羽支店長であつた事実、証人今出善太郎の「支店の有している権限を公示、広告したことはない」旨の証言等を綜合すると、原告が訴外間久に被告会社を代理して本件手形を振り出す権限があつたと信じ、且つ信じたことについて正当な理由があつたものと認めることができる。
従つて被告会社は訴外間久がその正当な権限を超えて振り出した本件手形について、民法第百十条によつて責を負うべきであるから、原告の本訴請求は正当であるとしてこれを認容した。